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Blue/bLUE


by blue_blog
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乖離

曖昧な感情、例えば、愛とか、夢とか、そういう、不可思議で、現実味のない感情に流されてみる。
それはきっとなくたって生きていけるような代物だし、もっと切実に、生活のうえに追いかけてくるものに目を奪われて、
そんな感情が自分の中に存在していることすら気付かないままに、日々は過ぎていった。
街を歩いてみても、自分以外の存在は自分を自分として認識することすらなく、自分は自分でしかない。
孤独感に苛まれながら、そっと街を後にした。
歩き続けて、ふと空を見上げると、星空。
満天の星空が広がっていた。
此処には誰もいない。
自分だけがこの空の下に佇んでいるように見える。
世界の中心に自分ひとり。
不思議と心地よい孤独感に酔いしれていた。
人は一人で生まれて一人で死んでいく。
そんな言葉を思い起こしながら。

だから、私は街の喧騒が好きになれなかった。
人間は・・・いや、生きとし生けるもの全ては孤独だ。
それを慰めあうために必要以上に馴れ合っているだけにしか見えなかった。
そしてその影で、互いが互いを傷つけあうためだけに存在しているように見えた。

だからといって、田舎暮らしも嫌だった。
生きていくために必要以上の人間関係を求められるのが嫌だった。
結局、何処に行っても、人間の弱さをまざまざと見せ付けられるような気分になった。
そして私は気付いた。
私は何故か、人間に生まれながら、人間という存在が嫌いなのだと。

そして、一人で歩き出すことにした。
気楽に歩き出したのが間違いだったのかもしれない。
精神的には確かに気楽な旅だった。
しかし、その一歩一歩が肉体を蝕んでゆく。
一歩歩けばその分体力を消耗し、それを回復することは困難を極めた。
人間に会えば、多分私を見て、病院に担ぎ込もうとするだろう。
それくらい、明らかに傷ついていたし、私の思想を理解することは困難を極めるだろう。
そして、この人間が嫌いで、人間から離れようとした私を、病院のベッドの上に縛り付けるだろう。

私も又、私が大嫌いな、曖昧で、孤独で、そして不可思議な人間なのだ。
だから、一寸だけ、ベッドの上に縛り付けられても、人間に助けられたいという感情が芽生えた。
しかし、それは同時に私の嫌いな人間という存在に囲まれて、唯怠惰な時間を過ごすだけの生命体に、私が堕落することを意味する。
私は、一瞬芽生えた感情をかなぐり捨てて歩き続けることにした。
一歩一歩、私は存在を抉り取られてゆく。
そして、最後の一欠けらを、自ら抉り取り、道無き道の道端で一人倒れこんだ。

私は自分の感情に素直に、のたれ死んだ。
曖昧な感情を胸に確かに、のたれ死んだ。
非現実的な現実であった。
そして、天国とか地獄とか、何処へ向かうでもなく、その存在は誰にも認められず、知られず、ただ掻き消えていった。
by blue_blog | 2004-05-04 01:36 | 青色文庫